保護者・先生の方へ
ATAWI確率は、中学校第1学年・第2学年の「不確定な事象の起こりやすさ」(確率)を、公式の当てはめではなく、確率とは何を表す数なのかという意味の理解から、計算・判断まで つなげることを目指したサイトです。ここでは、設計の考え方、数学的な根拠、使っている見方(モデル)の限界を説明します。
設計の考え方
- 入口は「確率 1/6。6回投げたら、1回は出る?」という問いです。6回ずつ30セット投げた結果を見せ、1回ごとの結果は予言できないことから始めます。
- 多数回の試行による確率(中1)と、場合の数による確率(中2)を、別々の単元として切り離しません。 第2章で相対度数が近づく様子を見て、第4〜8章で数えて求め、第9章で「2つの見方は同じ値を指す」ことを実験で確かめます。競合分析で、多くの教材がこの2つを別の回として扱っていることがわかったため、ここを中心に置きました。
- 「同様に確からしい」は、言いかえの定義で終わらせず、「同じくらい起こりやすくない分け方」(硬貨2枚の3通り、和の11通り)を問題の形で出し、実験とのずれから気づけるようにしています。
- 図は、1000回の試行の折れ線(乱数の種を固定)、樹形図、36マスの表、確率の物差しの4種類です。図は「▶ 動かす」で1歩ずつ進み、途中で予想の問いが出ます。
- 冒頭の問いに、最終章でもどります。
問題集(213問)について
- 中学 200問(中1 相対度数 40問、中2 160問:1つを取り出す・同様に確からしい・樹形図・表・くじ・起こらない確率・判断)、高校へつなぐ 10問(数学A、期待値の1問は数学B)、社会の確率 3問(検査の陽性、誕生日、くり返しのくじ)。
- 1問ごとに、ヒント(2〜3段)、解き方(3〜5段、図つきのものあり)、よくあるまちがい(誤答ごとに、どう考えてその答えになったかを推し量った言葉)、「今日つかった考え方」をつけています。
- 答えは、起こりうる場合をすべて書き出して、生成のたびに自動で数え直しています(さいころ・硬貨・並べ方・選び方・くじ・重みつきの場合を列挙するプログラム)。解説文中の等式、図の場合の数も検算しています。そのうえで、作問した担当とは別の担当が全問を問題文から解き直して点検しました。
- 点数・順位は出しません。記録は端末の中だけで、◎(最初の答えで正解)○(まちがえてから・ヒントを見てから正解)△(まちがえたまま)で表示します。
使っている見方と、その限界
| 見方 | 使う場面 | 限界(サイト内でも明示しています) |
|---|---|---|
| 乱数による試行の図 | 相対度数が近づく様子(第1・2・9章) | 本物の実験ではなく、種を固定した乱数です。回数を増やしても、ぴったりその値になるわけではありません。 |
| 樹形図・表 | 場合の数を数える(第4〜8章) | 数えた場合が同様に確からしいときだけ、確率の分母・分子にできます。 |
| 確率の物差し | 確率が0〜1の数であること(第3章) | 位置は確率の大きさを表すだけで、何回に1回必ず起こるという意味ではありません。 |
| 人数で数える(自然頻度) | 条件つきの確率(第11章、社会の確率) | 検査の数値は考え方を示すための例です。 |
数学的な根拠
子ども向けの画面は直感的な説明にし、各章の「数学ではどう考える?」で根拠を示しています。
- 多数回の試行の相対度数が近づく値を確率と考える(統計的確率)。確率 p で独立にくり返すという数学のモデルでは、この性質は大数の法則として証明されます。ただし「近づく」は「大きく外れることが起こりにくくなる」という意味で、ある回数から先で一致するという意味ではありません。
- 起こりうる場合が有限で、どれも同様に確からしいとき、確率=(あてはまる場合の数)÷(すべての場合の数)(数学的確率)。「同様に確からしい」は現実の物についての仮定であり、多数回の試行で、仮定と大きくずれていないかを調べられます。
- 0≦確率≦1、(起こる確率)+(起こらない確率)=1。
- くじを引く順番によって当たる確率は変わらない(すべての引き方が同様に確からしいことから)。
よくある誤解と、サイトでの扱い
| 誤解 | 扱い |
|---|---|
| 確率 1/6 なら、6回で必ず1回起こる | 第1章:6回ずつ30セットの図。1回も出ないセットが3セットに1セットほどある。 |
| 続けて出なかったから、次は出やすい(ギャンブラーの誤り) | 第1章、問題 P038 など。さいころは前の結果をおぼえていない。 |
| 硬貨2枚の出方は3通り、それぞれ 1/3 | 第4章で問い、第9章で1000回の実験と樹形図で確かめる。 |
| 2つのさいころの和は11通り、それぞれ 1/11 | 第6章:36マスの表。 |
| 確率 90%で起こらなかったら、確率がまちがい | 第3章・第10章:1回の結果では確かめられない。 |
| くじは先に引くほうが有利 | 第8章:樹形図で数える。 |
| 実験の確率と数えた確率は別もの | 第9章:同じ値を指すことを確かめる。 |
| 「陽性の人のうち病気の割合」と「病気の人のうち陽性の割合」の取りちがえ | 第11章・社会の確率:人数で数える。 |
学習の記録
「学習の記録」では、章の中の予想・理解確認・問題集のすべての問いのうち、何%に取り組んだかを表示します。点数・順位は出しません。記録はその端末の中にだけ保存されます。
授業・家庭での使い方
- 導入(10分):トップの問いを投げかけ、実際にさいころを6回ずつ投げてみる。第1章の図と比べる。
- 各章(1章10〜15分):図を動かす前に予想させ、「どう考えた?」を口頭か紙で説明させる。
- 演習:問題集を分野ごとに。まちがえたら、ヒント → 解き方 → よくあるまちがい の順に見る。
- まとめ:最終章で同じ式を説明させ、理解確認で技能と活用を確かめる。
学習指導要領との対応
学習指導要領(平成29年告示)の各事項との対応は、学習指導要領との対応にまとめています。第11章と、問題集の「高校へ」「社会の確率」は発展の内容です。
参考にした研究
- Kahneman, D. & Tversky, A. (1972). Subjective probability: A judgment of representativeness. Cognitive Psychology, 3, 430–454.
- Konold, C. (1989). Informal conceptions of probability. Cognition and Instruction, 6(1), 59–98.
- Lecoutre, M.-P. (1992). Cognitive models and problem spaces in "purely random" situations. Educational Studies in Mathematics, 23, 557–568.
- Fischbein, E. & Schnarch, D. (1997). The evolution with age of probabilistic, intuitively based misconceptions. Journal for Research in Mathematics Education, 28(1), 96–105.
- Gigerenzer, G. & Hoffrage, U. (1995). How to improve Bayesian reasoning without instruction: Frequency formats. Psychological Review, 102, 684–704.
- Zhu, L. & Gigerenzer, G. (2006). Children can solve Bayesian problems: the role of representation in mental computation. Cognition, 98(3), 287–308.
- Batanero, C., Chernoff, E. J., Engel, J., Lee, H. S., & Sánchez, E. (2016). Research on Teaching and Learning Probability. ICME-13 Topical Surveys, Springer.